生き様を売ってナンボ!プロ飲み師・高山洋平に聞いた「愛される飲み屋」の流儀

ジョル

ジョル

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こんにちは。この度、人間編集部のメンバーになったジョルです。厨房内でお酒を片手に失礼します。

普段は人間編集部がある肥後橋駅からすぐの場所で[はらいそSPARKLE]というカレー屋兼スパイス居酒屋を経営している男です。

お店での通常営業はもちろん、全国各地のカレーイベント(万博公園で行われるカレーEXPO、福井テレビ主催の福井カレー博など)への出店や、ライブへの出店、楽屋ケータリングなどお店以外でのカレーの販売も行っています。また料理本へのレシピ提供や、テレビ、ラジオ、雑誌などへのメディア出演……と、カレー屋としては、充実した日々を送らせてもらっています。


雑誌『Meets Regional』にて、スパイス変人として登場。カレー業界では、そこそこ名が知られています。

実は、「カレー狂の女」こと編集長のトミモトさん、飲兵衛の副編集長ロマンくんがうちの店の常連客。そんな縁で、猥談BARの出張イベント「猥談できる人間酒場」へ出店したことを機に、人間編集部に顔を出すようになりました。


「猥談できる人間酒場」での一コマ。助平なカレーをこさえました。

で、今回僕がこうして記事を書いているのは、先日人間編集部が行ったイベント「変集予備校 夜間部マニアック科」の第一回目のゲストに、ずっと憧れていた高山社長がいらっしゃったからなんです。

今現在、「スパイス居酒屋として売れたいのに、カレーしか出ない。そして、お酒が売りにくい。なんなら自分のキャラも売りにくい」という悩みがあるのですが、これは相談に乗っていただくチャンスかも!と、思いまして。


マニアックなジャンルで活躍される、プロの方からありがたい話を聞けるイベント「変集予備校 夜間部 マニアック科」

▶︎イベントの詳細はコチラをご覧ください!

というわけで、高山社長にうちの店にきてもらいました。

何もしゃべらないか、心に爪痕をのこすフレンドリーか。


にじみ出る野生のダンディズム。

高山洋平(たかやまようへい)
東京都足立区出身。大学卒業後、投資用不動産会社を経て、IT業界大手の株式会社アドウェイズに入社。独自の営業理論を武器に、中国支社(上海アドウェイズ)の営業統括本部長に。その後、2014年に株式会社アドウェイズの子会社として株式会社おくりバントを創業。年間360日は飲み歩くというプロ飲み師かつ、独自の営業論とインパクト大なキャラクターが魅力。初の著書『ビジネス書を捨てよ、街に出よ』も11月6日より発売開始予定。
Twitter:@takayamayohei1

ジョル

はじめまして、カレー屋のジョルです。Twitterで「やばい奴がいる」と噂になっていたのがきっかけで、高山社長の存在を知りました。あっ、やばい奴とか言ってすみません。

高山社長

で、今日はなんで、カレー屋に呼ばれたの?

ジョル

僕が悩みを抱えていて、それを相談したくて。あと、勝手に自分との見た目にシンパシーを感じて。もう10年後の自分だなと。

高山社長

同じ山に住んでる同胞感ありますよね。

ジョル

で、相談なんですけ……

高山社長

ところで、おすすめのお酒ってありますか?

ジョル

一番大切なことを忘れていました。

高山社長

まあ、まずは飲みましょうよ。

ジョル

かしこまりました! 知り合いのカレー屋さんが開発に携わったカルダモン焼酎がイチ推しでして。

高山社長

じゃあ、カルダモン焼酎のソーダ割りで。


このUSBネックレスには、会社概要が入っているそう。

ジョル

どうですか? お味は。

高山社長

うまい。なにより、うまいですね。で、相談って?

ジョル

では早速お話をしましょうか。今回はプロ飲み師の高山さんに「スパイス居酒屋としてブレイクする方法」を、相談したかったんです。

高山社長

ただ勘違いして欲しくないのは、プロ飲み師であって、飲み屋の経営をしているわけじゃないからね。とりあえず、乾杯しましょうよ。

ジョル

高山さんの本を読ませてもらったのですが、「行きつけのお店を作りたかったら、まずは三日連続で通う」とか、細かいテクニックが色々と書かれていましたよね。自分がお客さんとして飲み屋に行くときはできるんです。けど、それをお客さん相手に自分ができてるかってなるとなかなか難ししくて。例えばカレーとお茶だけの夜ごはん使いに来店されるお客さんに話しかけていいのか? ずっと携帯見ながら一人で食べてる人にどう対処すればいいのか? とか。


高山さんの本は、今はなべ敷きとして使っている。

高山社長

ラーメン業界だと、お客さんへの接し方に2つのパターンがありますよね。ひとつははもう完全に話しかけないパターン。例えば、[ラーメン二郎]はもちろん話さない。あと、高円寺に[天王]っていう中華があるんですけど、俺の友達は7年間通って、やっと水差しが置かれるようになったとか。

ジョル

例えを2つ出してくれたけど、どっちも無言パターンじゃないですか。にしても7年ですか〜!! とんでもない焦らしプレイですね!!

高山社長

7年ほぼ毎日通ってやっと水差しが置かれる。これはかなり高度なコミュニケーションですよね。

ジョル

それは高度すぎて、僕には真似できそうにないですね(笑)

高山社長

じゃあ真似できるパターンを教えます。店員からフレンドリーに話しかけるパターン。[覆面]という店があって、そこには「文字通り覆面を被ったマスターがいるんだけど(現在は被ってないらしいです)。

ジョル

だから覆面っていう名前なんですね。

高山社長

これは友人から聞いた話なんだけど、麺を食ってるといきなり「恋してますか」とかって聞いてくるんだよね。

ジョル

いきなりですね〜(笑)


ベッド・インのTシャツに反応する高山社長。

高山社長

俺も[がんこ一条流]ってところで、初めて行ったら「この後どっか行くんですか?」って聞かれたんだよね。いきなりだったから戸惑っちゃって、「家に帰ります」とか答えちゃったんだ。客も試されてるんだな〜と、あの時感じたよ。

ジョル

フレンドリーはフレンドリーでも、そういう「あれなんやったんやろう??」って心に爪痕残すスタイルがヤバイですね(笑)。

こんなにうまいんだから、もうカレーだけでいいじゃん!

高山社長

そうだ、忘れてた! カレー食べさせてくださいよ!

ジョル

かしこまりました!


右側がナスとトマトの豆カレー、左側が豚肉と大根の味噌カレー。その他の副菜などを全て混ぜて食べるのが、はらいそスタイル。

高山社長

いただきますね。なんだこれ! うまいなあ! スパイス居酒屋とかじゃなくて、「カレー屋」にしましょうよ!


「いや、やっぱうまいよコレ」と、高山社長。

ジョル

ありがとうございます! カレーは自信があるんです。ただ酒場として……

高山社長

そうだった。スパイス居酒屋としてやっていくなら、まずは、お客さんに飲み屋だと認知させることが大事ですよね。何時までやってるんですか?

ジョル

今は、22時までなんです。ただ、来年の1月からはもう少し飲み屋の方にシフトしていこうと思って、23時半までに延ばそうかなって思ってます。コロナもあってどうなるかわからないですけど。

高山社長

カレーの種類減らして、仕込み時間を短縮しちゃえばいいのに。やっぱ、閉めるのが早いよ。こういう店にくるサグいお客は夜中に酒を飲むからね。少なくとも、2時ぐらいまでにしないと。24時以降が一番盛り上がるからね。


「ビビンバみたいに混ぜてください」というお願いをしっかり守ってくれている高山社長。

ジョル

たしかに。お店はもちろん25時くらいまでやることもあるんですよ。僕の心情としては「気は遣わんでいいから、金使ってくれ」って感じで。だから、飲み続けてくれる限りは全然店は開けますし、その代わり酒の手が止まったら今日は閉店!ってかんじです。

高山社長

そりゃそうだ。じゃあ、結局遅くまで開ける日もあると。それなら飲み屋として、まあ成立はしてるね。

ジョル

カレー屋さんだと思って来てる人に対して、いかに飲み屋使いをしてもらえるかが今の課題ですね。

高山社長

たしかに難しいとこだよね。俺もカレー屋に行くときはお酒は飲まないなー。


高山さんの話に終始納得をするジョル。

ジョル

そうなんですよね。カレー屋と酒場の顔というか、2つの表情を使い分けるのって、なかなか難しくって。高山さんはビジネスマンという顔とプロ飲み師としての顔をお持ちですが、どうキャラを使い分けてるんですか?

高山社長

使い分けはしてないです。このまんまです。俺は、ただの遊び人ですから。

ジョル

僕は仕事とプライベートで顔を使い分けてしまっていているので、そのバランス感覚はすごいなと思います。

高山社長

そもそも、ビジネスの顔とプライベートの顔を使い分けようとするのをやめませんか? ビジネス面を前面に出して稼ごうとするのをまず諦めましょうよ。ジョル君がやろうと思ってることって大衆に向けたものではないだろうし、好きの延長でやってるものだと思うんだよね。そもそもジョルくんはメインストリームで稼ぎたいわけじゃないんでしょ。

ジョル

たしかに。

高山社長

俺は緊急事態宣言の時もそうだったけど、行きつけのバーの2階を家賃を払って借りて、誰もいない飲み屋街で1人でずっと飲んでいたよ。

ジョル

お店側にしても、そういうお客さんがありがたいですよね。

高山社長

それはお互い様だよ。だからそういう風に思ってもらえる客でなきゃいけないし、店じゃなきゃダメなんだよ。お互いがリスペクトする関係が重要。そこがビジネスビジネスしちゃうと、関係が深まらないよね。

ジョル

おっしゃる通りですね。

高山社長

話は変わるんだけどさ。最近、俺バーベキューと、釣りにハマっていて。「バーベキューピットボーイズ」のYoutubeが好きなんだけど、「菜食主義者が来やがった」とかヤバイこと言って、ショットガンで追い払ったりするんですよ。

ジョル

すごいっすね!

高山社長

そういうことすればいいんじゃないですか?「お酒飲まない人が来やがった」って、ショットガンで追い払う。危ない人みたいな方向に振っていくっていう。

ジョル

そんなことできるわけじゃないですか(笑)

店舗展開なんかできないんだから、生き様を売って愛してくれる人とだけ商売しよう。そうしなきゃダサくなる。

ジョル

せっかくなので、ほかに何かアドバイスなどありましたら、お願いします。

高山社長

高円寺に[インド富士子]っていうカレー屋があるんですね。そこの「インド富士サワー」を飲んで欲しいです。すげえスパイスを自ら調合してて。

ジョル

独自のスパイスアルコールってことですかね?

高山社長

ジョル君もスパイスのプロなんだから、オリジナルのスパイスカクテルみたいなものを作ればいいんじゃないかな。

ジョル

なるほど。たくさんのお店がひしめく中で、分かりやすくここにしかないものっていうのは武器になりますよね。

高山社長

そう、まずは酒の入り口を作る。でも最終的には、そのお店を好きになるかが重要なんだよね。こういうカウンターの店の常連になる人は、やっぱり最後は「人」で決めるんだよね。いい酒場には「この人ともっと話したいな〜」とか、「またあの人に会いに行きたいな」って人がいますよね。そして、その場を作れるかどうかは店主の力量なんだよね。

ジョル

ですね。


ここで、アドバイスに喰らいまくってる、筆者です。

高山社長

例えばうちの親会社であるアドウェイズの岡村社長が飲み屋をやったとしたら、そこには面白い人がたくさん集まってくると思う。そして、その面白い人達がまた面白い人を連れて来てくれる。これがさっき言っていた「人」で決まるということなんだよね。

ジョル

その人に憧れるかどうかの話ですよね。そういう要素がいるんでしょうね。料理とか酒じゃなくて。

高山社長

まあ出ちゃいますよね、いやでも。そういう人たちは隠してても滲み出るものがありますからね〜。


金言ラッシュの到来に「メモを取らねば!」と、慌てて厨房から飛び出した筆者。

高山社長

さっきから思ってたんだけど、すごくいい音楽が流れてるよね。でもこの音楽だって、誰もが良さを分かるわけじゃないんですよ。店の内装もジョルくんの出で立ちもそうですけど、全員がこの店の良さが分かるわけない。どうせ付き合うなら、分かる人を大事にすべきじゃないですか。

ジョル

腑に落ちました。

高山社長

そうそう、最初に話したラーメン屋じゃないけど、お客さんに「最近、恋してますか?」とかっていきなり聞いてみて「この店主、大丈夫かな」ってお客さんをびっくりさせてみるとかね。そういうコミュニケーションを楽しんでみたらどうですかね? やっぱりジョルくんがやっているみたいな飲み屋は、生き様を売ってナンボですからね。

ジョル

イヤ、本当に。高山さん、ぐうの音も出ないくらいかっこいいです。ありがとうございました。

ビジネス書は捨てて街に出て、好きを探そう。そして、それを大切にしよう。

お話を聞かせてもらって最初に思ったのは、そういえば、僕は新卒で、広告制作会社につとめていたんですが、入社当時に研修で商品を売りたいターゲット像を徹底的に掘り下げて、その人に刺さるクリエイティブを作れば、結果としてそのターゲット属性及びその周辺も獲得できる……みたいな話を教えていただいたことがあります。

その時「ターゲットを世の中全員にしたものは売れない」「“これはあなたのためのもの”という名指しするような見せ方がないと刺さらない」と、教わって。そんな、10余年も前のことが、今回の高山さんとの対談でフラッシュバックしました。

独自のワードチョイスと例え話を交えながら「スパイス居酒屋はらいそSPARKLE」という、これから売り出したい商品の戦略会議をしていただけた、ほんとに贅沢な時間でした。

それにこの「イヤなお客さんとは付き合わない」「自分のことを好きな人のために頑張る」という考え方って、人生を少し生きやすくするためのライフハックなんだとも思います。無理して万人受けを狙ったり、自分と会わない人と付き合うのってその人本来の魅力も毀損すると思うんです。

自分が好きなことをやる。で、それを面白がってくれる人を大切にするのって自分の人間性を磨いていくと思うんですよね。無理してジム行ったり、資格取ろうとしたりして丁寧な暮らしを手に入れる。なんて、ストレスを感じるくらいなら、好きなものをもっと好きになって気持ちよく生きる。

それで気持ちよさそうにしていたら、きっと少しだけ人生が楽になるんでしょうね。

そんな生き方を体現している高山さんは、スーパーエリートにはなれない人(僕を含む)にとっての一服の清涼剤みたいな存在なんだと改めて感じました。……と、なんかあさいところで人生を語ってしまいましたが、普通に暮らしてる人が、ほんの少しだけ生きやすくなるためのコツってこういうことなんだろうなー。

ちなみに、そんな人生の遊び方が詰まった高山さんの著書『ビジネス書を捨てよ、街に出よう』が、絶賛発売中です!

人生に悩んでいる僕みたいな人! ビジネス書を捨てよ、街へ出よう! 自分の好きを大切にするために。

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