2018年8月3日(金)に株式会社人間にて開催した『#ライター交流会 in 大阪 vol.3』のイベントレポート。
ライターのヨッピーさんと吉川ばんびさんをゲストに迎え、「キャラ立ちって必要?」をテーマにトークセッションを行いました。
ヨッピー
1980年大阪生まれ。商社勤務を経てフリーライターに。「市長とシムシティで対決する」「42.195kg背負いながら42.195km歩く」など話題になる記事を作るのが得意。広告企画も多数手がける。
Twitter:@yoppymodel
吉川ばんび
1991年生まれのフリーライター。「文春オンライン」「みんなのごはん」「ジモコロ」など、多数のメディアで執筆活動を行う。取材・インタビュー・コラム・エッセイなど幅広く活躍中。
Twitter:@bambi_yoshikawa
トミモトリエ
人間編集部編集長。1976年東京生まれ。ファッションデザイナーからウェブ業界に転身。自分を生中継し続けるブログや、時間を切り売りする人間レンタルサービスを立ち上げ、”ダダ漏れ女子”として話題になる。ウェブマガジン『東京ナイロンガールズ』初代編集長。2014年大阪へ活動の拠点を移し、株式会社人間に入社。
納谷ロマン
人間編集部副編集長。1990年京都伏見生まれ、高円寺育ち。大学在学中より月刊誌『TOKYO GRAFFITI』編集部に所属。『KINDAI GRAFFITI』の二代目編集担当などを経て独立。紙面からインターネットへ活動の場を広げ、現在はフリーライター兼カメラマンとして、関西を中心に活動中。
ライターにキャラ立ちって必要なのでしょうか? 「書き手としての立ち位置がはっきりしていると、書きやすく読まれやすい」「個性や専門性があると仕事を取りやすい」「ファンがつく」など、ライターにとって、キャラ立ちすることで得られるメリットが多いのでは、というのが仮説。
キャラ立ちすることで記事や読み手にどんな影響があるのか?
顔出しにはどんなメリットやデメリットがあるのか?
そんな疑問の数々について、ゲストおふたりの体験談も交えながら考えます。
司会は人間編集部のトミモトリエと納谷ロマンです。
トミモト:参加者の方々には、事前に「あなたの個性や強みは何ですか?」というアンケートに答えていただきました。「インタビューが得意」「誰にでもわかりやすく書ける」「専門性がある」など、いろいろ挙がっています。
ヨッピー:ざっくり見て、ピンとくるのは「八尾愛」の人ぐらいですかね。というのも、キャラ立ちってナンバーワン、オンリーワンじゃないとあまり意味がないんですね。「太ってる」とかは絶対ナンバーワンではないじゃないですか。
トミモト:確かに。ヨッピーさんは「体当たり系といえばヨッピー」というイメージがありますが、あのキャラは最初から?
ヨッピー:僕も、キャラ立ちみたいなことを考えながらやってきたところはあります。19歳からブログをやり始めたんですけど、最初は童貞キャラで暴言を吐きまくってました。ただ、童貞だからこそ許されるっていう部分があって、それに味をしめて……。
トミモト:それを聞いてピンときてる人がそこに……。
稲田:そうですね、僕は童貞です。
突然指名されたライターの稲田ズイキさん。「女体の代わりに野菜でグラビアを撮ったら凄いことになった」という童貞らしさ全開のパワーでバズりまくった記事が記憶に新しい。
一同:(笑)
トミモト:稲田くんはおいといて、ヨッピーさんのキャラ立ちした記事の例を見ていきましょう。
最新ランニンググッズを装備すれば「100Kmマラソン」を完走できるの? 検証してみた
i: ENGINEER[2016年6月]
私服がダサいやつが10万円を投資して渋谷のカリスマになった話
オモコロ[2014年3月]
トミモト:やっぱり、体張ってるやつが多いですね。
ヨッピー:全部共通のテーマがあって、インターネットって「弱い人が強い」んですよ。「金持ちで美人でキラキラ」っていうのはネットでは嫌われるじゃないですか。「童貞でモテなくて……」っていう方がウケがいいから、僕は基本、弱い方に行こうとしてるんですね。たとえば「100kmマラソン」なら「かわいそう」って思ってほしくて。
トミモト:私服のやつも「かわいそう」狙い?
ヨッピー:これは「僕、お金にがめつくないよ」っていうのがテーマです。「10万円で服を買おう」っていうキャンペーンで、当たった賞金でもっとダサい服を買う。10万円をドブに捨ててるんですよね。けっこう大きな金額じゃないですか。僕、ライターになった当初は童貞と無職が売りだったんです。「貧乏で金がない底辺ライターです」と。
トミモト:ほうほう。
ヨッピー:でも、だんだん売れ始めるわけです。そうすると「貧乏キャラ」でいこうとしても「いやお前、稼いでるでしょ」「お前が稼いでなきゃ後輩が可哀想だろ」ってなってきて。だから僕、ちょいちょいお金をドブに捨ててるんです。「儲かっても僕自身は贅沢してないよ」っていうブランディングの一環なんですが、あんまりよそで言わないでね(笑)
ロマン:仕上がってるなあ。
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SPOT[2016年10月]
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ヨッピー:あと、銭湯とかは単に好きだから書いてます。好きだから啓蒙したいしネットでもずっと言ってるんですけど、あんまり数字が取れなかったんですよね。でもしつこく言ってる内にちょっとずつ銭湯ブームになってきて、それに乗っかって出しました。
トミモト:もともと持ってたものを「今だ」っていう時期に出すわけですね。
ロマン:タイミングを見て、ですね。
ヨッピー:あと、バイラルメディアをやっつける記事は「僕だってたまにはいいことするんだぞ」って。
トミモト:これはみんな応援してましたよね。
ヨッピー:今、紹介した記事に共通するのが「儲かってない」ってことです。全然割に合ってない。バイラルメディアの記事は半年かかってるし死ぬほど面倒臭いし。
トミモト:半年!
ヨッピー:でも、自分のブランディングに関わる記事はコスト度外視でたまにやるようにしてます。ライターって目の前の仕事に追われて、こういう記事を作れなかったりするんですけど「月に1本はやりたいことやろう」っていうのを続けていけば、キャラが立ってくるんじゃないかな。
トミモト:続けていくっていうのも意外と難しいんですよね。ところで、ヨッピーさんのキャラ立ちポイントを勝手にまとめてみたんですが……。
ヨッピー:頭おかしいって、絶対良い意味じゃなでしょ。
トミモト:いやいや、良い意味です!あと、「見た目が普通のおっさん」っていうのは私、すごいポイントだと思っていて。
ヨッピー:(笑)
トミモト:ちょうどいいおっさん体型なんですよね(笑)ちょっとお腹出てるくらいがいい感じ。「変にシュッとしすぎてたらだめ」みたいなところがあると思うんです。
ヨッピー:筋トレしてムキムキになっちゃうのは違うんだよね。
トミモト:「そこまでやるか」っていうくらい無茶したり。
ヨッピー:そう!採算度外視で!でもそれがボディブローのように効いてくるっていうか、ちょこちょこそういうのやっておくと「なんかあいつ可哀想だから仕事あげるか」って割のいい仕事が巡ってきたりするんですよ。
昨年12月にフリーになったばかりにもかかわらず、メディアから引っ張りだこの人気ライター・吉川ばんびさん
体当たり面白系ライターの代表格・ヨッピーさんとうってかわって、薄幸美人系キャラで人気の吉川ばんびさんにも話をお聞きします。
トミモト:吉川ばんびちゃんが世に出るきっかけになったのはしんどいおっさんの記事だよね。
ばんび:はい。「職場とかで、若手の女の子に様子のおかしいLINEしてくるおじさんいるよね」って、傾向と対策をまとめた自分のブログの記事なんですが……。
トミモト:第1回のライター交流会に来てくれて、初めて挨拶した時「あのしんどいおっさん書いた子かー!」ってなって、仕事を頼むようになって。
ばんび:この記事で「おじさん専門家」みたいなキャラになってAbemaTVでインタビューされたり、いろいろとお仕事をもらえるようになりました。
トミモト:ばんびちゃんは、ほかにもいろいろキャラを持ってて。
トミモト:こんな感じかなと思うんですが、もともと超ブラック企業で働いてたんですよね。
ばんび:はい。「残業代くれ」って言ったら万札でほっぺた叩かれたり……。ブラック企業の記事もいろいろ書きました。
トミモト:美人なんだけど、どこか幸薄そうで、身体もちっちゃくて……。
ヨッピー:これほとんど悪口じゃないの?
トミモト:いや、そこが最高なんです。あと、インドアだからか妄想ネタの溜め込みがすごい。
ロマン:鬱屈したネタがどんどん出てくるもんね。
トミモト:そんなばんびちゃんの個性が輝いた記事が、Kindai Picksの「インスタグラマーの”実態”と”秘訣”!フォロワー3.8万人の女子大生に聞いてみた」という記事ですね。
初出社して、就職先が「ブラック企業」だと気付いたあなたへ
文春オンライン[2018年4月]
インスタグラマーの”実態”と”秘訣”!フォロワー3.8万人の女子大生に聞いてみた
Kindai Picks[2018年2月]
トミモト:大学生のキラキラ系インスタグラマーにインタビューしたんですけど、ばんびちゃん自身はインスタをあんまりやってなくて。セミの孵化をアップしたりしていいね6件しかついてなかったり……(笑)。でも両者のギャップが面白いというか、ばんびちゃんしか聞き出せないことを聞いてくれました。
トミモト:次にお聞きしたいのが、「キャラを作っているのか」ということです。
ヨッピー:僕はそのままの部分もあるし、作ってるところもありますね。よくがっかりされるんですけど「実はそんなに風俗に行くわけじゃない」とか……。下ネタは本当に好きだけど、インターネットに出すのは中学生くらい向けの下ネタだけにしようとか。
一同:なるほど。
ヨッピー:「パンツ見えてうれしい!」とかは書けるけど「(自主規制)がどうのこうの」はちょっと……とかね。本当は(自主規制)について書きたいですけどねー。
ロマン:抑えている部分もあると。ばんびちゃんはどうですか?
ばんび:私は普段とほぼ同じですね。メディアで書けないような性格悪いとこもあるけど。
トミモト:参加者の方は、半数以上が使い分けてるらしいんですよ。
トミモト:おふたりのライター名についても聞きたいです。なぜその名前なのか、あとプロフィール写真のこだわりとか。
ヨッピー:「ヨッピー」は中学生の時のあだ名ですね。写真は変えすぎると「誰?」ってなっちゃってフォロワーが減るのであんまり変えない、くらいがこだわりかな。
ばんび:私も、もともとあだ名が「ばんび」です。プロフィール写真はまだ定まってない。
ロマン:ふたりとも、何となく名前と顔が合ってますよね。
トミモト:顔出しについて迷ってる人も多いみたいですが、どうですか?
ヨッピー:そもそも、キャラ立ちが必要なのってインターネット独特の文化なんですよね。仮に僕がAとBという雑誌で連載を持っていたとして、Aを読んだ人が「面白かった、これを書いてる人の、ほかの連載も読みたい」ってBも読む……ってあんまりないんですよ。それぞれの雑誌が独立してるから。
ロマン:なるほど。
ヨッピー:ネットなら、僕のほかの記事がすぐ読める。「この人はこういうキャラなんだ」って連続性が出てくるんです。だから顔出ししたほうがいいとは思いますけどね。
トミモト:ばんびちゃんも最初から顔出してるよね?
ばんび:そうですね。
ヨッピー:でも本当にしょうもないことだけど、女性は顔出しによって顔の美醜を言われるじゃないですか。「うるせえ馬鹿野郎」って感じですけど、嫌な思いをする場合もあるかもしれない。
トミモト:「親バレが怖い」とかもありますよね。ヨッピーさんは前にカミングアウトする記事を書いてましたね。
ヨッピー:親にバレてやばいのって住職ぐらいじゃない?
トミモト:実家がお寺の稲田ズイキくんがそこに……。
稲田:檀家バレが始まっています。
トミモト:ばんびちゃんはどうですか?
ばんび:ペンネームにしたのは、親バレのリスク回避が大きいんですよ。
トミモト:有名になってくると、こんな感じで検索されるんですよね。
ロマン:歩いてて「あ、ヨッピーだ」とかもあります?
ヨッピー:あるある。歌舞伎町を歩いてただけで「ヨッピーが風俗街の怪しいビルに入っていった」って書かれたりとか。
トミモト:ばんびちゃんは気にしますか? 顔出ししてることで「彼氏とか、結婚とかに影響するかな……」とか。
ばんび:今のところあんまりないですね。
ヨッピー:女性の場合は、知らない男性よりも業界の男性によるリスクが多いですよ。変なおじさんが「仕事のご飯行こう」とか言って、実際は口説かれるだけとか。ないですか?
ばんび:女性ライターの間で有名な要注意人物とかはいますね(笑)
トミモト:ライターの社領エミは本名で顔出ししてるんですよね。で、Facebookやってる社領のおじいちゃんが「面白かったよ」って記事にコメントしたりしてるっていう……。
一同:特殊!
トミモト:もともと社領には「25歳で処女」っていうキャラがあったけど、結婚が決まって今はキャラチェンジ中です。
ロマン:今は子育てブログばっかり読んでるらしいです(笑)。でもたしかに、童貞キャラとか処女キャラだと、いつかは卒業してしまうっていうのがあるよね。
トミモト:まとめとして、キャラ立ちは必要なんでしょうか?
ヨッピー:専門領域ですよね、あったほうがいいのは。でも早い者勝ちなんですよね。ナンバーワンかオンリーワンじゃないとなかなかしんどいので、自分の得意分野であり、かつ世の中にまだあまりないものを見つけるのがいいのかなと。将来的に儲かる、儲からないはそのジャンルの市場規模に比例しますし。
トミモト:「書ける人を探してるけどいない」っていうジャンルもあります。特に今、eスポーツに詳しい人を求めてるんですけど、なかなか関西にはいなくて。マニアックな趣味とか特技とか、どんどん出していってほしいですよね。
ヨッピー:最初は仕事としてやってるうちに、どんどん好きになって詳しくなるパターンもありますね。キャラがなくてももちろん大丈夫なんだけど、「やっぱりキャラ立ちしてた方がいいのかな」と個人的には思いますね。
ここからは参加者によるPRタイム。今回は3名に登壇していただきました。
クエストルーム所属の編集者かつ、バンド『赤犬』のボーカルタカ・タカアキこと伊東孝晃さん。『月刊 歌謡アリーナ』の編集に携わるなど、歌謡曲の造詣が深い
仙台からはるばる参加してくれた大学生ブロガーのかっつーさん。旅行記や学生目線のトレンド記事についてのブログ『どっちかっつーと。』で10万PVを達成(Photo by camelstation)
最後は、近畿大学広報室から広報・小林さんが登壇し、人間編集部と運営するオウンドメディア『Kindai Picks』をPR。面白系から医学の知識まで、近畿大学にまつわる多彩な記事をアップしています。
前半のトークセッションをふまえたキャラ作り相談会では、ヨッピーさん、吉川ばんびさんが参加者のお悩みに答えました。「映画ジャンルを狙ってるけど、上には上の存在がいる……」「キャラが立ちすぎていて逆に仕事が限られるようになった」など、キャラ立ちに迷うライターの胸中もさまざまです。
日本庭園への愛が詰まったブログを運営するも「難解すぎる」と不評だというお悩みも。ヨッピーさんから「写真メインのアート寄りにするか、外国人向けにするのはどう?」とアドバイス
イベントの最後は全員で乾杯! 料理とお酒を片手に、いたるところで、参加者同士の話が盛り上がりを見せていました。『#ライター交流会 in 大阪』が、新しい出会いが生まれる場になればうれしいかぎりです。
次回は、2019年2月22日(金)、藤原麻里菜さんと稲田ズイキさんをゲストに「#ライター交流会 in 大阪 vol.4」を開催します。お楽しみに!
大阪で第3回#ライター交流会 ゲストのヨッピーさんが「キャラ立ち」トーク(船場経済新聞)
《ブロガー必見》ライター交流会in大阪~キャラ立ちは必要か?~(腐ったみかんは俺かお前か?)