無言で対面チャットインタビュー【解剖・吉川ばんび】by かまたま

kamatama

かまたま

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ライターとしてインタビュー記事を書くとき、誰もが一度は通る苦行の道がある。

「文字起こし」だ。

ときには1時間や2時間にも及ぶインタビューを録音し、その音源を後から聞きなおして延々と文字に起こす作業。

しかしこれ、よく考えるとかなり非効率ではないか?

何時間もかけて音源をすべて文字にするけれども、記事に使えるのは本当に一部だけ。あとの話は泣く泣くカットすることだってある。

それならいっそ、

インタビューをその場で文字に残して、
それをそのまま記事にできればめちゃくちゃ楽なのでは????

と、ライター見習いなのにライターの職務をほぼ放棄する考え方をしています、人間編集部アシスタントのかまたまです。

もっと効率的にインタビュー記事を書けないか考えた結果、こう思ったんです。

インタビューをチャットでやれば、文字起こしする必要なくない???
向かい合って話す代わりに、向かい合ってチャットすればよくない???

そう……
こんな風に。


ライター吉川ばんびさんに対面チャットインタビューしてみた

ずっとお話をお聞きしたかったフリーライター・編集者の吉川ばんびさんに、「インタビューさせてくれませんか? 対面チャットで」と大変に意味不明なお誘いをしたところ、「いいよ」と快諾してくれた。好きだ。

吉川ばんびさんは、1991年生まれ兵庫県神戸市出身のフリーライター・編集者。文春オンライン・Zing!などで貧困や家族問題、仕事と生き方などに関するコラムを連載している。

▶︎ばんびさんの実績一覧はこちら

ということで、人間編集部でも多くの企画・記事に携わる吉川ばんびさんをお呼びし、向かい合ってパソコンをカタカタするだけの新しいインタビュー法「対面チャットインタビュー」を決行した。


対面チャットインタビュー開始

※ここからはすべてチャットでやりとりしています

かまたま
よろしくお願いします

ばんび
よろしくお願いします

かまたま
いきなりなんですけど、

ばんび
はい

かまたま
それって普段着ですか?

ばんび
パジャマ

かまたま
パジャマ……
なんでまたパジャマで……?

ばんび
着替えるのがいやで

かまたま
インタビューなのにすごい余裕

ばんび
ノーブラやからねちなみに

かまたま
えっっそれ言って大丈夫ですか?

ばんび
うん、大丈夫大丈夫

かまたま
読者の皆さん、これ重要情報ですよ
では改めてインタビューに入ります

ばんび
はい
まって
寝そう
なんか音楽とかかけてほしい
マキシ●ムザホルモンとか

かまたま
かけましょう


本当にかけた。確かに喋らないから眠くなるし、これで丁度いい。ヴォォ!

かまたま
よし、では改めて
そもそもばんびさんがライターになったきっかけって、
ブログでしたよね?

ばんび
うん、しんどいオッサンのブログ
お仕事をもらえるようになりました

しんどいオッサンのブログ:ばんびさんの2017年の個人ブログ記事。「若手女性社員にしつこく連絡してくるしんどいオッサンの話」として実体験と対処法を書いたところ、2日間で約16万PVを得るほどバズり、ばんびさんがライターになるきっかけとなった。

かまたま
最初にお勤めだったところがブラック企業だった、
ってことですよね……?

ばんび
そうそう、新卒で東京の商社に入ったんですけど、
そこがバカみたいにブラック企業だったという

かまたま
経験したブラックエピソードで、
一番印象的なのって何かありますか?

ばんび
色々あるんだけど、印象的だったのは
「なんでこの会社は残業代が出ないんですか?」
って聞いた新入社員に対して、
会長がおもむろに財布から1万円札を1枚だけ取り出して
「今までの分だよ!!!!!!!!!」
って怒鳴りながらほっぺたに叩きつけた事件かなぁ

かまたま
wwwwwwwwwww


チャットなのに素で笑ってしまった

かまたま
いや笑っちゃだめなんでしょうけど
ヤバいですね

ばんび
笑えばいいとおもうよ
1万円じゃ足りねぇし
っていう

かまたま
ほんとにあるんですねそういう会社……

かまたま
やっぱりそういったご自分の体験が、
ライターとして書く記事のテーマ選びにも影響してたりしますか?
社会問題というか
苦しんでいる人に寄り添う記事が多いと思っていて

初出社して、就職先が「ブラック企業」だと気付いたあなたへ「貧困は怠慢だ」と言っている人が知らない「見えざる弱者」の実情など、ばんびさんの書く記事はときに社会においてかき消されがちな、決して明るくない問題の存在を誠実に訴えるものが多い。

ばんび
そうですね、基本的には「同じように苦しむ人をこれ以上出したくない」
というのが根底にあるかもしれない

かまたま
本当にそれって勇気のいることですよね……
社会的に重いテーマを扱うことも多いでしょうし、
そうなると記事の反響も様々じゃないですか?

ばんび
ありがたいことに、大体は「よく言ってくれた」とか
「同じように思っていた人が私だけじゃなくてうれしかった」
とか言ってもらえることが多いんですよね
ただ、「小娘が何言ってんだ生意気な」みたいなことを
言われることもたまにありますね
小娘って言っても、もう27歳なんだけどなぁ……

かまたま
そういうしんどい反応されたときって
どうやって対処してるんですか?

ばんび
無視してますね、基本的には
ただ、例えば書いた記事の内容を明らかに悪意を持って曲解して拡散しようとしたりする人がいて、そういう人に対してはしっかりと訂正するし、そういう対応はしないといけないのでやってますね
基本的には平和主義だからあまり論争はしたくないんだけど議論をしようとしてくれる人には丁寧に対応するけど、議論する気がなくてただただ批判をしようとする人に対してはほとんど無視してます、キリがないから

かまたま
なるほど…
テーマ的に議論も慎重になることが多いでしょうし、
めっちゃストレス溜まりそう……
あ、何飲んでるんですか?

ばんび
白湯

かまたま
wwwwwww

ばんび
やさしいから、白湯は

かまたま
わかる
ツイートとか見ててもそうなんですが、非常に体調面が心配です……
元気ですか……?

ある日のばんびさんのツイート

ばんび
うーん、何をもって元気といえるのかがわからない……
柔道整復師にこないだ体診てもらったんですけど
「死んでるやんこれ」
「体かわいそう、体が」
「病気?」
「ちょっともうわかんないなこれ」
って言われました

かまたま
wwwwwwww
実はもう死んでるんですか?

ばんび
うん、その可能性あるかもしれない


吉川ばんびはもう死んでいる可能性がある。

ばんび
猫背なのがすごくよくないらしい
最終的に「前向いて歩け」って怒られた

かまたま
人生のアドバイスっぽく見えるけど、
普通に健康へのアドバイスなところめっちゃウケますね
ふだん何食べてるんですか

ばんび
ふだん何食べてるだろう……
お昼に起きて、シリアル食べて、もう一回寝て、晩ごはんは自炊してます

かまたま
自立したハムスターの生活……?
めっちゃ寝てますね

ばんび
ほっといたら20時間くらい寝てる日もありますよ

かまたま
マジで死んでる説でてきた

ばんび
膀胱がパンパンになったときだけ仕方なくベッドから出ます

かまたま
動物的すぎる
記事は家で書くことが多いんですか?

ばんび
家以外では書けないんですよね、引きこもりだから

かまたま
家、いいですよね

ばんび
家から一歩も出たくない


断固として出たくない

かまたま
お家ではイグアナ飼ってましたよね

ばんび
うん、可愛いイグアナがいます
ちょっと待って、写真貼るから見て

かまたま
きゃわいい

ばんび
でしょでしょ

かまたま
お名前とかあるんですか

ばんび
バブちゃんです
ちなみに女の子
私の顔を踏みつけて起こしにきます

かまたま
なんていい子なんだ
ばんびさんって爬虫類とか、幽遊白書の戸愚呂弟とか、
好きなものがあまりにも特徴的すぎません?

幽遊白書の戸愚呂弟:ばんびさんが大好きな漫画のキャラクター。彼への愛が行き過ぎた結果、【大阪デートスポット】幽遊白書の戸愚呂弟と行きたい!おすすめデートという狂気あふれる記事を書き、20万PVを越えるバズを生み出した。

ばんび
あんまり自分では気づかなかったけどそうかもしれない……
動物は全般好き

かまたま
他に好きなものといったら何か思いつきますか?

ばんび
なんだろう……基本的にくだらないものが好きなんですよね
たとえば飲み会での一切の生産性がない下ネタとか

かまたま
下ネタいけるの、かなり意外です

ばんび
ナマナマしいのは聞きたくない派なんだけど、
小学生低学年男子レベルのやつでは一生笑ってますね
難しい記事を書いたあと特に、反動で下ネタしか話せなくなるときがある

かまたま
難しい記事の副作用があらぬところに


「全てが下ネタに聞こえるときがある……」重い副作用を告白するばんびさん

かまたま
ばんびさんがはっちゃけてる記事ってあんまり見ないですけど、
こういう記事案件の依頼は受ける・受けないみたいな
基準ってあるんですか?

ばんび
うーん、根暗だからはっちゃけるのは無理だし、
でもそういうのは依頼してくれる側が理解してくれていることが多いのでそこは困ったことないですね……
基本的には、人を傷つける内容とかでなければ全部受けてます!

かまたま
そうなんですね…!
逆に、ばんびさん的に
「こういう記事書きたい!」「こういう記事なら得意!」
みたいなのはありますか?

ばんび
基本的には、記事を書くときに「怒り」とか「これを突き詰めたい」という気持ちが原動力になってる気がしますね。
だから、そういう記事はとくに熱量が強く伝わるのか、読んでもらえることが多いです、ありがたいことに

ばんび
体験に基づいたテーマ、たとえば貧困とか、そういうのを分析して、勉強して、人にも伝えるために言語化するのは得意かもしれません

かまたま
確かに、ブラック企業とか貧困とか、重いテーマであっても
ばんびさんご自身の経験があるからこそ、
その疑問や意見が世間に届いている印象があります。
そういう体験に基づく記事を書くときに気を付けてることってありますか?

ばんび
記事は不特定多数への一方的な発信であるからこそ、
自分の価値観の押し付けにならないように、
そして安易なアドバイスは書かないように気をつけてます。
みんなそれぞれ事情がありますし、
例えば会社を辞めたほうがいいか、自分は支援が必要な状態にあるのか、それを一括りに判断することはできませんから。

ばんび
なのでできるだけ「根本的な解決への手がかり」になるような記事を書いていて。
「もし●●ならこういう方法もありますよ」という考え方や知識の共有をすることで、「新たな気づき」を得てもらえるよう心がけています。

かまたま
本当に配慮がすごい…
これからやりたいこととか、お聞きしてもいいですか?
記事に限らず

ばんび
家に帰って寝たい

かまたま
そうじゃなくて

ばんび
救いたい、人を


かまたま
えっ

ばんび
救いたい、人を

かまたま
2回言った

ばんび
いや宗教的なアレじゃなくてですね

かまたま
よかった、急に怖い人かと思った

ばんび
貧困とか、精神的なこととか、何かしらで「生きづらさ」を感じている人たちに対して、何か支援をしたいと思ってるんですよね。

ばんび
たとえば、「●●ちゃんを救う会」みたいな、難病や辛い環境にある子に対して支援をするために募金をつのっているのをよく見ると思うんですけど
それ自体はとってもいいことだと思うんですよ、
でも、それって「選ばれた子」なのかなというか、ほんとうに一部の子なんですよ。
その子が救われるのは本当に素晴らしいことなのは間違いないんです。
でも、私としてはそのとき「選ばれなかった子たち」がどうしても気になってしまうんですよね。

ばんび
世の中には貧困世帯で生きていて、虐待にあったり、そこまでいかなくても、生きづらさを抱えて生きていたり、大人になってからでも困っている人たちがたくさんいて。
そういう人たちに対しての理解って、あんまりまだ一般的じゃないのかなって思っていて。だからこそ、そういう人たちに対しての理解を深めるために発信も続けたいし、実際に支援するためのシステムづくりができないかなと思って

ばんび
今、日々試行錯誤しながら、もやもやしています

かまたま
今、文章を打ってるところを見ていて、
すごく本気で考えてらっしゃるのが伝わってきました。

ばんび
うれしい

かまたま
支援の仕組みをつくる第一段階として、記事を書いて発信してるんですね

ばんび
そうですね
今私がやるべきことはとにかく「発信」「メディア露出」をして、
できる限り多くの人に「支援が必要な状態だけれど、外見上は普通なので支援が受けられない人」の存在を知ってもらうことだと思ってます。

かまたま
これ、ばんびさんの言葉そのままに載せられるのがいいですね
(チャットインタビュー、めっちゃいいかもしれない)

ばんび
文字起こしもいらないもんね!!!
しかも、ニュアンスがそのまま伝わるのめっちゃいい!!!

かまたま
そうなんですよね!!
本人のニュアンスそのままが伝わってきてほっこりする!


チャットインタビュー、めっちゃいい。

かまたま
いやでも実際、
先ほどのばんびさんの思いをここで口頭で聞いて
あとで音源聞いて私が文字起こしをするより
ここでばんびさんが直接
ばんびさんの言葉で残してくれる方がずっといいし、
そのままそれを伝えることって
すごく大切だと思うんですよべ
ああああああ大事なところで誤字った
死にます

ばんび
よべ
よべ

かまたま
ああああああ


誤字脱字も全てチャットに残る


チャットインタビューは、楽しい

かまたま
さようなら

ばんび
行かないで

かまたま
うっうっ
ばんびさんの言葉を直接残せることをいいことに、もう直球で聞いちゃうんですけど、逆にこれだけは言いたい!!みたいなことありますか

ばんび
ええーむずかしい
基本的に「帰りたい」「ねむたい」しか言わないからなぁ
コミュニケーション能力があれすぎて
もうおふとんに還りたい

かまたま
あっこれは疲れてるな


完全に疲れている


足も出てきた


かわいい

かまたま
そういえば、
失礼なことを1つ聞いてもいいでしょうか

ばんび
なんでしょうか

かまたま
ばんびさんって「幸薄キャラ」みたいなところ、あるじゃないですか

ばんび
うん、言われる、解せぬ

かまたま
解せぬ質問ですみません

ばんび
いえ


いつの間にかスマホでのチャットに移行していた

かまたま
実際のところ、どうなんでしょうか
最近あったプチ不幸とか

ばんび
プチ不幸……
もはや何がプチで何がプチではないのか……

かまたま
そんなレベルで……!?

ばんび
よくも悪くも引きこもってるからあまり波がないというか
強いて言えば、数日前に東京出張から帰ってくるとき、ケチって格安飛行機で帰ろうとしたせいで、飛行機が大幅に遅延して、疲れが爆発して一人で成田空港の搭乗ロビーでめそめそ泣いていたことくらいかな
早くかえりたすぎて

かまたま
それはプチを超えている気が……

ばんび
東京は冷凍都市


幸せとは何なのだろうか。そしてこの靴下はどこで買ったのだろうか

ばんび
つらくなかったよ、
一人で泣いてても誰もわたしのことなんて見ないから

かまたま
あーー!!
この話はおわりです!!
じゃあ、逆に最近あったいいことは!?

ばんび
いいことなんてなにもないよ……

かまたま
あーーーーー!!!


いいことなんて何もないよ……何も……

ばんび
還りたい

かまたま
漢字が切実
言い残したことはありませんか??

ばんび
うん、我が人生に悔いなし

かまたま
やっぱり死んでる説ある


本当に悔いのなさそうな顔をされたので不安になった

ばんび
帰っていい?

かまたま
はい、お疲れさまでした

ばんび
おつかれさまでした

かまたま
それでは


スッ……


パタン


…………。


…………。

…………。

…………。

…………。

…………。

こうして、対面チャットインタビューは終わった

改めてチャットを見返してみた。

文字起こしをしなくても勝手にインタビューの文章ログが残るというのは、本当に素晴らしい。
ここまで載せたのも、ほぼチャットそのままの文章だ。

もちろん、お互い思考の言語化とタイピングがそこそこできなければいけないという条件はあるけれども、相手が打ち込んでいる間に情報の整理ができるし、水分補給やお手洗いも行けるし、総じて無駄のないやりとりができる。

さらに相手の表情・反応は目の前で見ることができるので、ニュアンスのすれ違いもほとんど起こらない。

……インタビュー中はパソコンに向かってニヤニヤするだけのオタクになってしまうが、それを除けばメリットだらけだ。

何より、本人の言葉そのままを載せることができるのが嬉しい。
ばんびさんのように普段からライター・編集者として文章を書いている方になら、私みたいなぺーぺーよりずっとずっといい表現ができる。

文字起こしが嫌いな方やインタビュー初心者にはぜひ対面チャットをおすすめしたい。
……それはいいとして。

このインタビュー中に共有された写真、

イグアナだけだったな……。





イグアナは、いいぞ。

(おわり)

写真:西畑将大
企画・編集:人間編集部

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かまたま

97年うどん県生まれ。関西の学生メディアのライター・編集を経て人間編集部アシスタントに。好きなものは釜玉うどん、苦手なことは深入り。

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