Web記事の「オチ」とはかくあるべし!?【解剖・ニシキドアヤト 】by 稲田ズイキ

稲田ズイキ

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深呼吸すれば冷たい空気が鼻を抜ける、そんな冬の日。
僕は一人、彼を待っていた。

「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い」


高いとも低いとも言えない、聴き心地の良い声。
振り向いた先に彼はいた。


ニシキドアヤトくんだ。

プロフィール
ニシキドアヤト(@art_0214)28歳。人気webライター。彗星の如くwebライター界に登場し、現在もさまざまなWEBメディアで記事を書いている。

 


僕がニシキドアヤトくんと話がしたいと思ったのは、彼がこれまで作ってきたヒット記事を追い続けても、どういう人間なのか全く見えてこなかったからだ。

彼のSNSをのぞいてみても、
・礼儀正しい
・スマブラが好き
・定期的に死にたがっている
くらいの情報しか得られない。何者なんだろう、ニシキドアヤトって。

そこで、この日、僕はニシキドくんと一緒に公園を歩きながら、彼のまだ見えていない「人間性」を探ろうとした。


でもまさか、この記事の最後があんなオチになるなんて、この時の僕は知る由もなかったんだ。

ニシキドくん、なんでライターになったの?


同世代のライター同士、僕らは肩を並べて、公園を歩くことに。

ーーニシキドくんはどういう経緯でライターになったんですか?

もともと、大阪の家電量販店で7年くらい働いた後、東京で求人広告の営業をしていたんですけど、ある日、知り合いの社長の会社に引き抜いてもらって。人事的な仕事だと聞かされて喜んで転職したら、一日中ひたすら電話営業させられまして……

ーー開幕から暗いな

結局、いきなりボーナスが25%削られるという意味の分からない仕打ちまで受けたのもあり、その会社を辞めまして。何しようかと迷ってた時に、大好きだった『オモコロ』みたいな笑える記事を自分で書いてみようかなと思い、『ニシキドアヤトのブログ』を始めたんです。

ーーニシキドくんがたまに死んだ目をしてる理由がわかった気がします……。ちなみに、どういうきっかけで『オモコロ』を好きになったんですか?

仕事で死にかけているときに、ARuFaさんの「美少女がうどんを『フーフー』してくれる装置を作りました」とか、かんちさんの「コショウを使って『くしゃみの世界記録』に挑戦してみた」とかを見て、「なんだこのめちゃくちゃ面白いものは!!!」って感動したんです。文章と写真でこんなに人を笑わせる世界があることを初めて知って。それから、ずっと『オモコロ』にハマってますね。かんちさんのくしゃみのやつは動画なんですけど。

ーー仕事でしんどい時とかに笑える記事を読んで癒される気持ち、めっちゃわかります……。でも、いきなりライターデビューして記事を書くなんて出来るもんですか? それまで文章書いたりしてなかったんですよね?

書いてなかったです。サラリーマン時代に1年くらいかけて、オモコロ界隈の記事をかなり読み込んで研究してたおかげかなぁ。一つ目の記事は「『死にたいな』と思ったので、全部捨ててブログはじめました。」っていう近況報告的な真面目な記事を書いたんです。すると知り合いや友人から「大丈夫?」と心配するメッセージなんかをたくさんいただいて。でも二つ目からは「ジャイアントカプリコが小さくなった気がするのでグリコに確認した話」っていうふざけた感じのテイストの記事を書いて、心配してくれてた人は完全に心配損でしたね。

ーー2作目からアクセルを掛けすぎでは? ニシキドくんは、ブロガーとしてキャリアをスタートしたわけですけど、そこからどうやってWebメディアのライターになったのはどうしてなんですか?

ありがたいことに、ふざけたブログを2、3記事書いてるうちに読んでくれる人が増えてきて、とある方から「新しいメディアを立ち上げるので、ライターとして書いてくれませんか?」って依頼がDMで来て……。

ーーブログ始めて2、3記事でお声がけされたんですか? かなり早くないです?

僕もびっくりでした!「お金もらって記事書けるのか!」って。それからそのメディアで3記事ぐらい書かせてもらって、だんだん今の仕事のテイストになってきた感じです。

ニシキドくん、モテるでしょ?


「ブランコ乗ろう!」だって。この日のニシキドくんはいつもと変わりなく陽気だったんだ。

ーーニシキドくん、モテますよね?

いきなり何なんですか。全然モテないですよ。

ーーうそ!絶対うそ!こんなに顔整ってて、優しいのにモテないはずない!

なんだこのインタビュー。本当に学生の頃から全然リア充じゃなかったし、高校の卒アルとか見せたら引くと思いますよ。

ーーえ、どんな感じだったんですか?

耳が隠れるぐらいまで髪を伸ばしてて、こう髪を真ん中で分けてニタッーっと笑ってるんですよ。今思うと自分でもすげぇ気持ち悪いなーって思います。基本的に学生時代はずっとゲームしてましたね。今もですけど。当時は外見に全然気を使ったりしてなくて。

ーー意外すぎて笑ってしまう……。でも今はモテるでしょ? ファンから「抱いて」ってDM来たりするでしょ?


「ほら、僕の方がもっと遠くへいけるよ!」そう言ってはしゃぐ僕をニシキドくんは優しく見つめていたんだ。

このくだり、いります? うーん……。僕、マジでそういうのなくて。

ーー嘘や!こんなにイケメンなのに!

僕、おじさまのファンが多くて。なぜかわからないんですけど、毎回僕の記事が出た時だけ反応してくれるおじさまがTwitterに何人かいるんですよね。その人のツイートは僕が公開した記事の感想で埋め尽くされてるんです。

ーーガチのファンなんですね。

めちゃくちゃありがたいことですよね。あまりウケなかった記事の時も欠かさずシェアしてくれているので、かなり救われてます。

ニシキドくん、おじさんに可愛がられてるよね?


このとき「同じ空を眺めている」と思っていたのは僕だけだったんだ。

ーーそういえば、ニシキドくんって、イケダハヤトさんとか、有名なおじさんに可愛がられてるイメージがあります。

いや、そんなことないですよ。イケハヤさんにも1回Twitterでリムられてますし。

ーーえ、なんでフォロー外されたんですか?

かなり前にイケハヤさんがきれいな月の写真を投稿した時に、僕が初めてのリプでドラゴンボールのピッコロ大魔王が月を破壊する写真を無言で送ったら、フォローが外れてまして。

ーー「そりゃそうだろ」以外のコメントが見つからないんですが、イケハヤさんといえば「高知に行って、イケダハヤトを落とし穴に落として来た」の記事が有名ですよね? どういう経緯であの企画はできたんですか?

イケハヤさんが「ニシキドさんにいじられたい」みたいなツイートしててたのを見つけて、「これはチャンスだ!」と思って。もともと、イケハヤさんを落とし穴に落とすアイデアを考えてたので。

ーーなんでそんなアナーキーなアイデアを元々持ってるんだ……?

ブログを始める前から、「この人と絡んだらこんなことしよう」ってアイデアをいくつか考えてたんです。その中で「イケハヤさんは落とし穴かな」と……

ーーたしかに、落ちる光景が想像できなさすぎるという意味では、一番面白いですね。

「実はこんな企画あるんですよ」って概要を書いたかなり長文のメールを送ったらすぐに「やりますよ、高知に来てください」って来て。それから1週間後に行って、イケハヤさんの弟子と落とし穴を作って落としたんですよね。

ーーニシキドくんの行動力もどうかしてるし、穴を掘る弟子もどうかしてるし、落ちるイケハヤさんもどうかしてると思うよ。

実は落とした後、大変だったんです。イケハヤさんはミニマリストだからシャツを数枚しか持ってないんだけど、その貴重な1枚をドッロドロにしちゃって。普通、落とす側は汚れても良いような着替えを持っていくべきですよね。あの頃はなんにも考えてなかったな〜。

ーーイケハヤさん可愛そう……。

その時は僕も「落としたい」としか考えてなかったので……。優しいイケハヤさんは、笑いながらドロドロの服を水道で洗ってました。


「ちょっと待ってよ、ニシキドくん!」気づけば、僕はずっとニシキドくんを追いかけていた。

ーーちなみに、今、お世話になっている「株式会社人間」はどこで知ったんですか?

『オモコロ』ファンになったのと同じで、当時、人間の人気ライターだった社領エミちゃんの記事をよく読んでたら、だんだん人間のファンになってきて。社領ちゃんがやってたイベントに出向いて「僕こういう記事書いてるんで、人間でも書かせてください」って営業しに行って、書かせてもらえるようになったんです。

ーーニシキドくんの大躍進の裏には「ファンになる力」がありそうだね。

昔から、好きになったら没頭しちゃうタイプなので。それから、人間さんとはいっぱい仕事させてもらってますね。「川の水」と「池の水」と「沼の水」を飲み比べる記事だったり。月6万円で生活する「ミニマリスト」に一日密着した記事は、締め切り1週間前まで企画が決まらなくて。「そういやミニマリストの友達いたな」と思い出して、企画提案してみたら通ってしまい、そのまま次の日のバスで福岡に取材に行ったりもしました。

ーーさっきからフットワークが軽すぎでは……。

当時は何も考えてませんでしたね。実家暮らしだったので、寝て起きたらご飯あって、お風呂も湧いて、洗濯もしてくれるし、本当に無敵状態でした。でも、「これじゃダメだ!」と思って、今は実家を出て暮らしてます。


「うわっ!」「あーっ!」この頃、僕らは子供みたいだったね、ニシキドくん。

ニシキドくんのいじり芸すごいよね?


ニシキドくんは花を見つめていた。僕はそんなニシキドくんをずっと眺めていたんだ

ーー聞きづらい質問なんですけど、ニシキドくんが自分で思う「ライターとしての強み」ってなんだと思います?

難しい質問だ。でも、よく編集者さんから言ってもらえるのは、いじり芸かな。

ーーたしかに、ニシキドくんの原稿は取材者をいじってるのをよく見かけますね。取材時にいじりを交えた会話をしてるんですか?

そういうケースもあるんですが、基本的には取材中に面白くなりそうなところがあったら、「記事でこういう感じでイジってもいいですか?」みたいに聞いたりすることが多いですね。

ーーなるほど。

僕が記事を読む時、お堅い感じの記事内容だとどうしても会話の部分が読みにくくて頭に入ってこないんですよね。そういった部分を少しでも柔らかくして読みやすくする為にアクセントとしてイジりやお笑いの部分を足したりしています。

ーーたしかに小休憩的な感じでお笑い要素があると読みやすいですよね。

取材対象も「面白い記事になった!」って喜んでくれることが多いですね。怒られないギリギリを攻めるバランス感覚は大事にしたいと思ってます。

ーーイケハヤさんもそうだけど、面白くなるから結局ニシキド君にいじってもらえると、オイシイんだと思います。記事の流れは取材中に考えるんですか?

取材中に使いたい流れを思いついたらメモするって感じですね。でも基本的には、文字起こしした文章と写真をみて、考えることが多いです。やっぱり、一番時間かけて向き合ってるのは、写真ですね。

ーー写真を見てどうするんですか?

写真をジーッと眺めて、「この写真で何かストーリー作れないかなぁ」と考えられるんです。ブレてる写真ひとつをとっても、いろんなくだりを連想できるので。

ーーその発想、たぶん一般的なライターの思考と全然違う感じがしますね。

そうなんですかね。僕は写真からストーリーを考えることが多いから、いつもカメラマンさんには「とにかく大量に撮ってください」ってお願いしてます。

ーーたしかに記事を書くタイミングで写真がないのって、一番絶望するパターンですしね。

ニシキドくん今後どうしていきたいの?

ーーニシキドくんは今後どうしていきたいとかあるんですか?

ーーもう、ニシキドくん、ちゃんと聞いてます?


いや、


すいません、


なんでもないです。

今後ですよね。課題は、どれだけ自分のオリジナリティーを出していけるか、ですかね。もともとは、オモコロの真似事から僕のライター人生は始まったんですけど、もう真似する段階は終えなきゃなって。

ーー恩師を超えていく展開だ……熱いやつだ……!

例えば、最初は「ライターの◯◯です。〜で失礼します」で、全部一貫していこうって思ってたんだけど、それじゃダメだなと思ってて。別の面白い言葉を使ったり、すぐに本題に入ったりとか、色々試してみてるところです。


今思えば、この時からニシキドくんの手はずっとポケットの中にあったんだ

ーーオリジナルな表現……。記事執筆って、繰り返しのように見えて、毎回挑戦ですしね。

やっぱり僕が好きなテイストは『オモコロ』で変わりなくて。でも、『オモコロ』って結構高度っていうか、見る側もセンスが問われるような笑いが多いので、僕はもうちょっとマイルドで誰が読んでも理解できて、笑うところは笑える記事を書きたいと思ってます。プラスアルファで、ちょっと知識を持ってたら笑えるような小ネタなんかを混ぜられていったら理想形ですね。

ーー入り口は広く、でも奥には「知る人ぞ知るようなネタ」が詰まってるような……

そうですね。このヒーローショーの記事では、特撮の小ネタを仕込んだり、魚屋さんは魚を食べるのが上手いのかって記事では、天丼(同じネタを何回も繰り返す技法)をしたり。わかる人が面白いのは当然だけど、わからない人が見ても絶対笑えるように作らないとって思ってて。これから、少しずつ挑戦って感じですね。

ーー実はニシキドくんのこと、掴み所のない人だと思ってたんですけど、こんなに仕事に対してめちゃくちゃ真面目な人だったとは……。今日話せてよかったです……

あの、ズイキくんには言いたかったんですけど、実は……

ーーえ? なんて?

……なんでもないですよ

ニシキドくん、オチってどう考えてるの?

ーーニシキドくん、記事のオチには何かこだわりはありますか?

オチ……。ラストの見出しの「最後に」ってやつ、苦手なんですよね……。「こんな話がありました、僕はなになにと思いました、皆さんはどうですか」……って、考えるの……しんどくて……

ーーえらいぶっちゃけますね。

でも、本文で……完全燃焼してるのに、なんで「最後に」っていう章を書くかっていうと……「オチ」を見て……ほしいからなんです……よね……

ーーたしかに面白系のオチって、最後に爆発したり、全裸になったり、いろんなパターンがありますよね

ーーじゃあさ、この記事はどんな感じのオチにしたらいいですかね?

ーーイケハヤさんを落とし穴に落とした記事のフリがあるから、池に落ちるとかでもいいかも?

ーーあ、それか、ドローン使って、だんだんと遠ざかっていくやつやります? あれ一回やりたかったんですよね!

ーーニシキドくんは、どういうオチが好きですか?

ーーあれ、聞いてます? ニシキドくん?

ニシキ、

ドくん!



ニシキドアヤトは消えた。
彼は身をもって「オチとはいかなるものか」我々に教えたのだ。
ありがとう。ニシキドアヤト。僕たちは君のことを忘れないだろう。

(おわり)

※演出上やむなくニシキドアヤトを消失させましたが、実際は消失しておりません。

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(いなだずいき)

26歳のお坊さん。京都の寺の副住職だけど、寺に定住せずネットとリアルで煩悩タップリな企画をやるネオ僧侶。仏なコラムを3媒体で連載中。フリースタイルな僧侶たちWEB編集長。妄想とハロプロが原動力。

26歳のお坊さん。京都の寺の副住職だけど、寺に定住せずネットとリアルで煩悩タップリな企画をやるネオ僧侶。仏なコラムを3媒体で連載中。フリースタイルな僧侶たちWEB編集長。妄想とハロプロが原動力。

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