キシダチカという、最近ライター界隈を非常ににぎやかしている女をご存知だろうか。
彼女は関西在住なので友人でもあるのだが、私はキシダチカについて「派手な人」「家族がヤバイ人」ということしか知らない。
Twitterに投稿されていたキシダチカとお母さんとのやり取り。お母さんは、霊感が強く、BLに詳しく、ゲイアイドルの追っかけをしているらしい。
あと、かつて私の隣で酒をあおりながら「とらのあな」でBL漫画を物色しつつ「股間がポカポカするんじゃ〜〜〜〜〜〜」と言い、サンプル画像を見て「どシコリ申し上げる…………」とか言い始めるヤバイ腐女子であることしか知らない。
あ、このままではキシダチカがお嫁に行けなくなってしまう。
(すみません、編集者の方、この部分カットでお願いします)
そんなキシダチカが、今、ライター界隈でメキメキと頭角を現している。私のよく知るライター像は「地味」「根暗」「内向的」であるゆえ、キシダチカにはある種の”異質さ”を感じている。
ブルースリーの全身タイツを着て、「スマホを修理してデータが無事だった」と喜ぶキシダチカ。部屋も派手。
そこで今回はキシダチカの生態を探るべく、彼女の生活に同行させてもらうことにした。
何でそんなに派手なんだろう。
うわっ………………派手………………
並ぶと色調の対比がすごい。
わーいばんびさん!! お待たせ!!
キシダさんは相変わらず派手ですね…………。
ばんびさんは相変わらず地味ですね。行きましょう!!
キシダさんの案内で古着屋「SPINNS」の2Fにあるカフェ「SPINNS VINTAGE&CAFÉ」に。写真の情報量がすごい。
飲み物のチョイスの対比もすごい。キシダさん何飲んでんの?伊予柑?
というわけで、あらためましてこんにちは。今日は色々聞かせてください。
バッチコイです。
キシダチカ プロフィール
1992年生まれの奈良県民。大学中退後ニート期間を経てトンチキハッピーな作品を作ったりコラムを書いたりしている。肩幅の広さが悩み。(自画像)
前から気になってたんですけど、ばんびさんて、何でいっつも地味な色の服ばっかり着てるんですか?
だって変に目立ちたくないもん。あとキシダさん、めっちゃ足開いてますよ。
いや、それにしてもこの色はダメでしょ!!もっと個性出していきましょうよ!!!
落ち着いて。歯茎しまって。
実は今日、ばんびさんに着てもらいたい服を色々持ってきたんですよ。
ええー先にインタビューさせてよ…………どんなやつ…………?
ちょっと待ってくださいね。ゴソゴソ……
ズゾッ
待ってなにそのくまちゃん!?!?!?!?!?!
マフラーですけど?
せっかくなので、着たいものをこの中から選んでください!
どうしよう、どれも着たくない。あ、これは?
これならまだいける気がする!
……また一番地味なやつ選びましたね。
これ地味なの? 天神橋筋商店街とかでよく見る派手なおばちゃんがよく着てるやつじゃないの?
ちなみに一番着たくないやつ教えてもらっていいですか?
え、これ。
これ。行きつけの古着屋で売れ残り続けてたので買ったものの、本人ですら1回しか着ていないという強敵。
じゃあこれにしましょう!
え〜〜〜〜めっちゃ嫌…………。
フルコーディネートするんで任せてください!!!
着替えた。試着室から出た瞬間、他のお客さんたちに一斉に見られて泣きそうになった。
あっ! 似合いますよ! いいじゃないですか、普段の服より、絶対そっちの方がいいです。
そう…………?
キシダさんって、最近では若手ライターとしてメキメキ頭角を現していると思うんですけど、メインは何をやってる人なんですか?
肩書きは決まってないんですよ。実は色々やっていて、イラストレーターや雑貨のデザイン、アイドルの衣装制作とか、本当にできることなら何でもやってます。
えっアイドルの衣装作ってるの!?
そうなんですよ、最近作ったやつ見てください!
アイドルグループ「最高じぇねれーしょん」のみなさん。
えっすごい!! これ全部手作りですか?
そうです、服飾の勉強をしていた母とタッグを組んでパーツの仕入れからお裁縫まで全部やってます! あと、雑貨はこんなやつ作ってます。
えっ何これは? お人形かな? かわいい。
「アコガレーヌ」というオリジナルの人形です。ブラジャーもあります。
アコガレーヌが佇むブラジャー。いつ着けるんだろう。
それだけ色々できるのに、何でまた別の職種というか、ライターに挑戦しようと思ったんですか?
もともとインターネットで記事を読むのも好きだったし、面白いことを発信をしている人が好きだったんですよ。大学は工芸のコースだったんですけど授業とは関係なく図工女子という作家グループで人形を作ったりデコレーションしたりしていて、ネットで自己表現することも好きだから、ライターに興味を持ち始めたんですよね。
なるほど。文章を書くのは今までブログや何かでやってたんですか?
ううん、全然。私、国語の成績が一番悪かったんですよ。だから読書感想文もレポートも毎回人にやってもらってたタイプです。
誰にやらせてたんや……。
ライターも含めて、今の仕事は「色々試行錯誤をし続けた結果行き着いた」、という感じです。イラストも人より抜きん出ているとは思えなかったし、漫画家にも向いてないなと自分で思うし。あと私は根暗なんですよ。
意外と人見知りですよね。最初はキョドってあまりしゃべってくれなかったけど、私が根暗仲間だと分かってようやくしゃべってくれるようになったというか。
そうそう。引きこもりだし人見知りだし根が暗いので、大学を中退した後、ニート期間にTwitterで自分のコンプレックスを描いて投稿しまくってたんです。そしたら「肩幅が広くて可愛い服を着こなせない」というイラストがちょっとバズったんですよ。
肩幅が広くて着れない服の悲しみが分かるかーーー!? pic.twitter.com/YSKuy43yFe
— キシダチカ🔴 (@Ochika_15) 2016年11月8日
あ、見たことあります。あれキシダさんだったんだ。
そこからメディアの人に声を掛けてもらえるようになって、徐々にウェブで露出が増えて、人間編集部でも記事を書くようになった……という感じですね。
次なるキシダさんオススメの派手スポットへ。この格好で2人で歩いてると、めちゃくちゃ見られるのが辛い。
キシダさんって、何で根暗なのにそんなに派手な格好ばっかりしてるんですか? 同じ根暗側の人間としては全然理解できないんですけど……
純粋に派手なものが好きというのもあるんですけど、身を守るためですね。
身を守るため?
「あの女、何かヤバそうだ」って思われたら、変な人に絡まれなさそうじゃないですか。
ああ、警告色(毒のある生物が捕食者に警告するために持っている派手な体色のこと)だったのか……。私は身を守る目的で、コンクリートに擬態するために地味な色の服ばかり着てます。
目的は一緒なのに行動が真逆なの、面白いですね。私、自分に自信がないんですよ。だから派手なものを身にまとうことで色々ごまかせるというか、テンションが上がるので派手な格好をしてるのかもしれません。
あー、その気持ちはちょっと分かる気がする。派手な服を着てから、なぜか私もちょっとずつテンション上がってきたもん。
キシダさん行きつけの「Nijiiro Ponic(ニジイロポニック)」。店内のファンシーさはまるで異世界に迷い込んだかのよう。
そういえばキシダさんは以前『おじいちゃん、ちゃんと使えてる? 80代のスマホ活用術を徹底調査!』という記事を書いてましたよね。その後、おじいちゃんはスマホをバリバリ使いこなせるようになりました?
これちょっと困ってるんですけど、おじいちゃんからLINEの通話がめちゃくちゃ来るんですよ。仕事中も延々鳴ってるときがあって。「ちょっとおじいちゃん後にして!!!」って言ったら「何でや〜〜〜!誕生日祝いたかっただけやのに〜〜〜!!(泣)」みたいな。
まぁまぁ、寂しがりなんですよ。使いこなせているようで何よりです。
実はマイネ王って、媒体的にエロNGなんです。
だいたいどこもそうだろうよ。
ところが、私の書いた初稿がほとんど削除されたってくらい、取材中におじいちゃんたちがエロ話で盛り上がっちゃったんですよね。
楽しそう。
それがきっかけで、小林さんというおじいちゃんの友達のスマホにエロサイトを入れてあげたんですけど、小林さんから「間違えて消えちゃったからもう一回入れてくれ」って頼まれて、この間入れ直してあげました。
アフターフォローが手厚い。
その後また消えてましたけどね。おじいちゃんでも操作が分かりやすい、おじいちゃん専用の優しいエロサイトを作りたいです。
こんなにファンシーな世界ある? 幼稚園児の女の子が入り込んだら一生出たくなくて泣いちゃいそう。
あと、キシダさんは大晦日が誕生日だから毎年祝ってくれる人がいなくて『大晦の誕生日を祝ってくれる人を募集してよく知らない人と超リア充な年末年始を過ごした』という記事も書いてましたよね。
あ、書きましたね。
めちゃくちゃ楽しそうでしたけど、その後もみんなとやりとりしてます?
一切してないですね。
しろよ。プレゼントまでもらっといて。
唯一、もともと知り合いだったマンゴー(高校の同級生)とだけたまにやりとりしてます。みんなには「また会えたらいいな」とは思っています。
少しずつ慣れてきました。この環境下では、むしろ地味こそが悪。愚の骨頂。
「愚の骨頂」こと地味カメラマンのショウダイ。今この空間でもっとも浮いているのは貴様だぞ。TPOを考えろよ。恥を知れ。
イラストも描けて、衣装も作れて、デザインができて、ライターもできる。となると、かなりいろんな方面から重宝されると思うんですけど、何でもできるからこその無茶振りみたいなことってあるんですか?
あー、ちょっとあるかもしれないです。色々やっているとその分、ありがたいことに多方面からお声掛けをいただくことがあるんですけど、たまに「これはいいように使われているぞ」と思うこともあって……。
言いにくいかもしれませんけど、具体的にどういうことがあるんですか?
以前あったのは、明らかに私のデザインとはテイストの違う雑貨屋さんから「こういう雑貨作ってくれ!」みたいな依頼があったんですね。売れた分だけ私の利益が増える、という話だったんですけど、商品を納品してから、一切連絡なくなって。
ええ、めちゃくちゃタチ悪い……!! お金はもらえたんですか?
結局もらえなかったですね……。クリエイターって、駆け出しの頃はそういう話をもらえるとありがたいし、引き受けちゃうじゃないですか。
うんうん、「これが次につながるかも」って思いますよね。でもそういうクリエイターの足元を見ている人もいますよね……。
そうですね……そういうことがあってからは、依頼は慎重に受けるようになりました。
店主さんと。ユニコーンちゃんきゃわいいねぇ、お友達とご挨拶しましょうねぇ、コンニチハ〜☆*:.。.(*´ω`*).。.:*☆
何でも駆け出しの頃は、色々気をつけないとそういう痛い目を見ることもありますもんね。キシダさんはライターの仕事を始めてから、何か意識的に取り組んだことはありますか?
すみません、特にないです(笑)人の真似にならないように、あえて独自路線で行きたいから、他の人の記事を研究して読み込んだり、みたいなこともしていないです。
確かに、キシダさんの記事って誰にも似ていなくて独特というか、「キシダさんだから面白い」みたいなところありますよね。健全で、誰からも嫌われないというか。
私、ネタを考えるために過去の経験を振り返っても、残念エピソードしか出てこないんですよ。田んぼに落ちたこととか。それをネタにできるというか、心が折れないことは自分の強みだと思っています。
インタビュー中に普通に個人的な買い物をし、普通に現金で支払いを済ませるキシダさん。
アメリカ村で一番派手な食べ物『OTTI CANDY FACTORY(トッティー キャンディー ファクトリー)』の虹色のわたあめを買う。このあたりからもう人目はまったく気にならなくなったが、その代償に目が死んだ。
キシダさんは今どんどん仕事のオファーが増えているじゃないですか。今後「こうなりたい!」という将来の展望ってあるんですか?
とにかく色んな仕事をしてみたいです。「キシダさん、これできそうだからやってみてよ」っていうお仕事をもらえると、意外とそれが向いていて、続いたりするんです。ライターのお仕事もそうだったので。
確かに第三者から見て「この人、これ向いてるよね」というのは結構当てになるかもしれませんね。
そうそう。ライターの仕事も「やってみない?」と言われて始めたことですけど、私が人に興味があるので、取材をするのもすごく楽しいんですよ。
あ、そろそろ別れ道ですね。最後に「これだけは言わせてくれ!」ということはありますか?
仕事をください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そしてあわよくば
連載をくださ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!!!!!!!!!
はい。分かりました。この記事をご覧のみなさま、よろしくお願いします。
ということで、じゃ。
じゃ。
P.S.
この企画を終えて吉川ばんびは、服の趣味が少しだけ派手になりました。
(おわり)
写真:西畑将大
企画・編集:人間編集部
撮影協力:SPINNS VINTAGE&CAF/Nijiiro Ponic
ばんびさんお待たせ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!